2011年11月16日

相続税増税の見送りにより顕在化しなかった相続トラブル増加と事業承継への障壁

政府税調は15日、未成立の11年度税制改正法案に盛り込まれていた相続税増税などについて、12年度税制改正に引き継ぎ実施することを見送る検討に入った。野党の反発が強いため。消費税増税論議を優先し、増税項目を絞り込む必要があると判断した。これには私も安心しました。

というのは、最近の相続紛争において、現預金が豊富にある事例は少なく、必ずと言ってよいほど流動性の少ない固定資産や株式などの処分を求められる事例が多く、遺産分割協議において円滑に財産の分配が進まずこの評価を巡って血みどろの紛争に発展する事例は少なくなかったからです。このような状況下で、相続税の基礎控除部分が引き下げられると、こういった紛争事例はより増えて、これまでトラブルにならなかった事例が、納税をきっかけとして紛争化する事例の激増を大変危惧していたのです。
さらに、この税制は、中堅企業や中小企業の事業承継においても大きな影響を懸念していました。特に、相続税の基礎控除の引き下げは、流動資産を保有していないオーナー企業にとっては、大きなトラブルとなり、オーナー親族の紛争に発展し、最悪の場合、倒産にに至る例もこれまでも存在していましたから、さらに増えるのではないか大変心配していました。特に地方などの雇用を支える中堅企業や中小企業の数がより少なくなり、地方の疲弊はより進むことになりかねなかったのではないでしょうか。

今の政権与党は、お金のあるところから取ればよいと言うが、政策の実行過程で、その負の部分に耳を傾けずに単に政治的な人気取りに走り対応を誤れば、ただでさえ再就職の厳しい地方において、多くの人を路頭に迷わせることになる。今回は、野党の反対でこのようなことは防止されたが、税制改正の場面では負の要素をきちんと検証してもらいたいと考えています。

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posted by NAY at 11:02| 相続・事業承継

2011年06月24日

相続放棄の熟慮期間に係る民法の特例法について

今回、「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律」(以下「特例法」といいます。)が成立し、平成23年6月21日に公布、施行された。特例法は、東日本大震災の被災者であって平成22年12月11日以降に自己のために相続の開始があったことを知った方(相続人)について、相続の承認又は放棄をすべき期間(以下「熟慮期間」といいます。)を平成23年11月30日まで延長するものです。

法律の意義と注意点について

@特例法が施行された時(平成23年6月21日)に既に3か月の熟慮期間が過ぎていても「対象となる方」の要件を満たせば、原則として相続放棄や限定承認を受けることができる。
A既に単純承認をした場合や相続財産の全部又は一部を処分していた場合は、相続放棄や限定承認をすることはできません。
B被相続人が被災者であるか否か、相続財産が対象地区にあるか否かは関係ありません。相続人が「対象となる方」の要件を充足するかどうかによります。
C相続人が複数いる場合は、被災者である方のみに適用されます。
D平成23年11月30日までに相続放棄や限定承認をする判断ができないときは、その前に家庭裁判所に熟慮期間の伸長の申立手を行う必要があります。

特例法の対象となる「東日本大震災の被災者」とは⇒
 @東日本大震災が発生した平成23年3月11日において以下の市区町村の区域に住所を有していた方で、
 A平成22年12月11日以降に、自己のために相続の開始があったことを知った方
を言います。

この区域は、東日本大震災に際し災害救助法が適用された市区町村の区域から東京都の区域を除いたものとなっています。
なお、この住居の判断は原則として住民票や公共料金の支払いなどの資料などから判断することになります。
 

岩手県全市町村
宮城県全市町村
福島県全市町村
青森県八戸市,上北郡おいらせ町
茨城県水戸市,日立市,土浦市,石岡市,龍ヶ崎市,下妻市,常総市,常陸太田市,高萩市,北茨城市,笠間市,取手市,牛久市,つくば市,ひたちなか市,鹿嶋市,潮来市,常陸大宮市,那珂市,筑西市,稲敷市,かすみがうら市,桜川市,神栖市,行方市,鉾田市,つくばみらい市,小美玉市,東茨城郡茨城町,東茨城郡大洗町,東茨城郡城里町,那珂郡東海村,久慈郡大子町,稲敷郡美浦村,稲敷郡阿見町,稲敷郡河内町,北相馬郡利根町
栃木県宇都宮市,小山市,真岡市,大田原市,矢板市,那須塩原市,さくら市,那須烏山市,芳賀郡益子町,芳賀郡茂木町,芳賀郡市貝町,芳賀郡芳賀町,塩谷郡高根沢町,那須郡那須町,那須郡那珂川町
千葉県千葉市美浜区,旭市,習志野市,我孫子市,浦安市,香取市,山武市,山武郡九十九里町
新潟県十日町市,上越市,中魚沼郡津南町
長野県下水内郡栄村































より詳細は、法務省のウェブサイトをご確認ください。
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posted by NAY at 14:57| 相続・事業承継

2011年03月07日

相続人死亡の代襲相続と遺言、最高裁判決

事例は、「母親が遺言で、子2人のうち長男に「全財産を相続させる」旨の指定をしていたところ、母親よりもこの長男が先に死亡。そこで、この長男の子ら(孫)が、遺言により「全財産の相続」を代襲相続すると主張した。これに対し、長男のきょうだい(長女)が原告となり、長男の子らに法定相続分の権利の確認を求めていたというものです。なお、母の夫はすでに亡くなっていた。」というものである。


争点としては、母の相続人指定の遺言の効力は、長男に対する関係に限るのか、長男の系統の卑属(子や孫)に対する関係にまで生ずるのかです。平成23年2月22日、最高裁判例は次のように判断しました。


「遺言をする者は,一般に,各推定相続人との関係においては,その者と各推定相続人との身分関係及び生活関係,各推定相続人の現在及び将来の生活状況及び資産その他の経済力,特定の不動産その他の遺産についての特定の推定相続人の関わりあいの有無,程度等諸般の事情を考慮して遺言をするものである。」とした上で、
このような遺言者は,「通常,遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される。」とし、
「当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人(−例えば遺言者の長男−)が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者(−例えば、長男の子供、遺言者から見れば孫−)その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」として、遺言の効力は生じないとしました。つまり、本件では、長男の兄弟姉妹(長女)の法定相続分が確認されることとなった。

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posted by NAY at 00:50| 相続・事業承継

平成23年度税制改正と相続・事業承継への懸念

 平成23年度税制改正により、相続税が大幅に上がるのはご存じかもしれない。私自身は税理士ではないが、やはり以下のような改正において、一番気になっているのは、事業承継と相続紛争の増加への懸念だ。事業承継において、株式の評価は当然問題になり、現実問題として、事業を承継する経営者に潤沢なキャッシュがあることは、最近では、むしろ少ないのではないか。これでは、税金を支払うことができずに、株式を譲り受けることができない事例も増えてくる。
さらに、今回の改正で、今回死亡保険金の控除も少なくなっているので、相続時の保険金による潤滑油的な遺産分割時の調整にも一定の限界がでてくる。国の財政が厳しいのは分かるのだが、特に現実にキャッシュがあるわけではない、株式等の相続の場合に、中堅企業や中小企業の経営陣の事業承継がうまくいかずに破たんする例などが出ないことを祈るばかりである。単純に相続税から取ればよいのだと短絡的なことを言う一部民主党議員がいたが、一方で中小企業支援をしっかりやらねばなどと言っていた。自分たちがやっていることの本当の意味を全く分かっていない。個別の各論について、まともに研究しているとは思えない。皆さんはどのような感想をお持ちだろうか。

【基礎控除の圧縮】
 現行   5,000万円 + 1,000万円×法定相続人の数

 改正後  3,000万円 + 600万円×法定相続人の数
 ・上記改正により、相続税がかかる範囲が拡大されることになる。
  例えば相続人1人の場合、現行では6,000万円の基礎控除があったが、改正後は3,600万円に減額される。

【相続税率の変更】
各取得分の相続税の税率のうち2億円超の金額に対する税率が上がり、最高税率が55%になる。 

 現行

       

 改正後

 各取得分の金額

税率 

控除額 

各取得分の金額 

 税率

控除額 

 1000万円以下

10% 

─ 

 1000万円以下

 10%

 ─

 3000万円以下

 15%

 50万円

 3000万円以下

 15%

 50万円

 5000万円以下

 20%

 200万円

 5000万円以下

 20%

 200万円

 1億円以下

 30%

 700万円

  1億円以下

 30%

 700万円

 3億円以下

 40%

 1700万円

 2億円以下

 40%

 1700万円

 3億円以下

 45%

 2700万円

 3億円超

 50%

 4700万円

 6億円以下

 50%

 4200万円

 6億円超

 55%

 7200万円

(注)各取得分の金額とは法定相続分に応じた取得金額をいう。


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posted by NAY at 00:17| 相続・事業承継

2010年03月02日

事業承継における早期の手当の重要性

中小企業においては、創業者などの経営者に株式が集中している場合が多く、それが相続対策で分散してしまうことも多い。企業側にとっても相続争いでトラブルに巻き込まれることもあれば、株主側も一部の問題のあるコンサルタントによる不適切なアドバイスを受けて逆にトラブルに巻き込まれる事例も少なくない。早期に適切な専門家に依頼をしてほしい。より早期に相談を行うことで、MBO、EBO、ファンドや事業会社による買い取りなど様々な選択肢の検討も可能になる。
一部、日本経済を支える中小企業を食い物にしようとするアドバイザーに対しては断固たる態度で臨みたいと思う。正しい知識を持って適切に承継させ雇用を守るとともに株主にとっても有益な事業承継が1つでも多く成立することを強く望みます。

 
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posted by NAY at 11:20| Comment(0) | 相続・事業承継

2008年03月13日

事業承継の円滑化に関する法律案の提出

中小企業庁は、事業承継の円滑化のための中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律案を提出することを公表しました。生前贈与株式の遺留分からの除外、事業承継税制の抜本的拡充など重要な問題にかかる制度改正です。今後、本法案を受けて事業承継が円滑に行われることを期待します。
 事業承継の現場では、親族内承継のみならず、M&AやEBO,MBOなど事業再編の手法による事業承継もありますが、経営能力のある人材の存在がどの事業承継スキームにも前提となるため、中小企業を承継する経営能力のある人材の確保が非常に重要な問題となってくるものと思います。 

 
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posted by NAY at 02:34| 相続・事業承継

2007年12月03日

事業承継の啓蒙活動の難しさ

 事業承継の問題は、種類株や信託法など様々なスキームが議論されているが、いずれも事前の策である。事前策を利用できるのは後継者が決まっているということが前提となる場合が多い。
 しかし、現実の中小企業の問題は、後継者となる人材が見つからずに相続争いに突入する事例がほとんどではないであろうか。事業承継の問題を事前予防の制度論から啓蒙活動を展開しても、後継者自体が見つからない事例においては、せっかくの制度も台無しである。
 個人的には、紛争化した場合の、裁判所の柔軟な仮処分の判断などの対応が重要になってくると思っている。今後事業承継協議会などでは、この分野の議論も活発化することも期待するが、昨今のセミナーなどでは、一番重要なこの部分が抜け落ちている気がしてならない。事業承継の問題が紛争化した場合の特別な対策を法制度を含め議論しなければいけない段階にきているのではないであろうか。

 
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posted by NAY at 22:42| 相続・事業承継

2007年10月17日

事業承継税制、中小企業の相続税大幅減?

 中小企業の事業承継を税制面からバックアップするため、事業承継に伴う非上場の同属会社株を相続する場合は、課税課各の8割以上を減額するとの2008年度税制改正案が政府与党で検討されているようです。日経新聞をご覧になった方はご存知かと思います。
 中小企業の事業承継については、株式等の経営資源の分散をいかに次世代の後継者である経営者に集中させるかが1つの重要な課題となっており、経営資源に税務メリットが得られることは重要なことと思われます。税収とのバランスであまり節足に制度設計を行い対象となる中小企業があまりに少なくなってしまう結果とならないような議論が期待されます。
 
 もっとも、事業承継は、税務だけで解決できる問題ではありません。現実には、事業を承継する後継者不足が深刻な問題となっているのも実状ですし、相続法制や会社法の事業再編制度の活用など法律問題も多く発生します。多くの専門家が連携してこの問題に取り組む必要があると思います。事業承継も内部統制と同じで各種コンサル等が大騒ぎしていますが、私はビジネスチャンスという視点のみでこの分野に取り組むことはやや違うのではないかと思っています。日本の技術を支える中小企業を守りたい。中国などの外国の中小企業にはない国内の強い中小企業同士の連携を守り、日本経済の縁の下の力持ちである皆さんを支える。そんな風に考えなければいけない分野であると考えています。
 
 
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posted by NAY at 18:19| 相続・事業承継