2016年06月19日

ベンチャー企業のコーポレートガバナンス

東証の上場基準が緩和されてから久しいがまだまだベンチャー企業のコーポレートガバナンスに問題がある事例が少なくない。上場が容易になっても市場の信用を毀損するような企業は上場を許されるべきではないし、上場を維持できるのも問題がある。確かに、企業規模に応じて組める体制に限界があるのは事実だが、投資家である株主への信頼を構築する点においては、マザーズ上場でも東証一部でも満たすべき基準があるのではないかと考える。

まず、取締役会の機能を評価するにあたり、コーポレートガバナンスコードの審議の活性化の項目を再確認しておきたい。原則4−12には以下の通りの記述があり、至極当然の内容である。この点から必要な事項を検討してみることとしたい。

【原則4−12.取締役会における審議の活性化】

取締役会は、社外取締役による問題提起を含め自由闊達で建設的な議論・意見交換 を尊ぶ気風の醸成に努めるべきである。
補充原則 4−12@
取締役会は、会議運営に関する下記の取扱いを確保しつつ、その審議の活性 化を図るべきである。
(@) 取締役会の資料が、会日に十分に先立って配布されるようにすること
(A) 取締役会の資料以外にも、必要に応じ、会社から取締役に対して十分な 情報が(適切な場合には、要点を把握しやすいように整理・分析された形 で)提供されるようにすること
(B) 年間の取締役会開催スケジュールや予想される審議事項について決定し ておくこと
(C) 審議項目数や開催頻度を適切に設定すること (D) 審議時間を十分に確保すること 

とくに、(@)の資料の準備が取締役会開催の当日や前日までかかり、配布がギリギリになってしまっている企業は問題を抱えていることは否めない。新規事業やM&Aにより事業拡大や経営を加速するために取締役会に上程する場合においても、適切に運用されている企業においては、取締役会の数日前やその計画段階で社外の役員との情報が協議され、適切に意見交換も取締役会に上程される前に当然に行われ、そのうえで審議されている。この理想形を実現できていない企業はやはり、事業部門と間接部門の連携に問題があるのか、そもそも経営企画、管理の部門の人員の体制の不十分性を検証しておかなければ、取締役会の機能が十分果たされているのか疑問が残ってしまうことになる。

(A)の点については、(@)ができている企業ほど適切に情報が整理されているように思われる。なお、最低限議論されるべきポイントとして、経営判断が適切になされているかという観点から、特に新規や既存事業のワーストシナリオ、ベストシナリオを議論しつつも、ワーストシナリオの際の回避策についてもきちんと整理され議論がなされることを目指すことが必要である。取締役の善管注意義務を考えるにあたり、やはりワーストシナリオ自体やその回避策についても議論がなされずに事業が失敗するような場合は、取締役の善管注意義務違反を議論するにあたっては非常に厳しい事態になりかねない可能性もありうるからである。
この点ができていないベンチャー企業は議論するべき論点についての運用を速やかに変更することを検討するべきである。

(B)(C)については、年間のスケジュールや予想される審議事項、項目数については、多くの場合、計画はあることが通例だと思われるが、企業の規模と体制の成熟度のバランスから何を取締役会で議論すべきかはきちんと検証すべきである。取締役会の効率性ばかりを重視して、決議すべき上程事項を限定しすぎると特に社外の役員が把握せず施策が実行されることが発生しかねない。このようなことが十分にできていない企業においては、特に、社外役員は取締役会だけではなく、経営会議などにも適宜参加することで情報を収集することが行っておくことが望ましい。

まだまだ検討すべき事項はこれだけにとどまりませんが、ベンチャー企業のガバナンスを活性化し、日本の市場が適切に評価されるように現場から支援しなければなりません。



posted by NAY at 01:23| コーポレートガバナンス

2016年03月30日

コーポレートガバナンス強化及び企業経営において、ITの知見は必須である。

企業のコーポレートガバナンスにおいて、取締役の機能評価や社外役員にとって必要な人材について何度か自分自身の考え方をお伝えさせていただきました。今回は、経営の効率化けとリスクを正しく判断していくためには、経営者にITの世界の知見が極めて必要だと考える理由についてご紹介したいと考えます。

(序章) 全産業のソフトウェア産業化
2011年に、Marc AndreessenWall Street JournalWhy Software Is Eating The Worldというインパクトのある表現を使ってもあっているが、全産業がソフトウェア産業化していることはほかの記事などでもご存知の方も多いかもしれません。しかし、この傾向についていけない経営者しかいない企業は、競争性どころか企業が対処しなければならない課題にも迅速に対応できず損失を生んでしまうことになりかねない時代が到来していると考えます。


【日本での現状】
いくつかの事象から日本の現状を心配しています。必ずしもすべての会社がそうということはありませんし、十分にIT人材を確保し、経営の効率化を実現し、リスクを的確に把握できている企業もありますが、問題のある企業も多いと思います。一度取締役及びその下で運用されるような経営会議レベルにおいてITの戦略と中長期の経営戦略を合わせて議論できる人材がどれだけいるかはその企業の力量を図るうえで従業なことであると考えます。

【システム開発トラブル事例から見る経営の非効率と損失の拡大】
まず、日本におけるシステム開発の現場において1つ私が感じていることがある。数々の数億円以上の訴額に上るシステム開発紛争の相談を受けていると多くの場合、特にユーザー企業側の経営トップが基幹システムや自社のビジネスの業務にいおいてシステム化の必要性を正確に認識できていないことに起因する事例が多いです。すべてベンダーの責任にしてしまうことで、効率的なシステム開発が行われず、なんでも外部ベンダに頼めばよいというシステム開発の重要性を理解できていないことが原因となる紛争事例に発展します。結果、トラブル対応コストによる損失を拡大させているだけではなく、利益獲得の機会も失っている事例は少なくない。これは日本経済おいて、非効率かつ不健全なマイナス要因となっています。

【セキュリティ意識の低さと情報の越境取引の存在を認識していない】
次に、システム開発の予算削減において、軽んじられるのがセキュリティ対策の問題があり、これが、ビジネスのリスクにつながってくる問題です。従来と異なり、企業はいろいろな側面で個人情報を取得し、これを活用してビジネスを行っている。さらには、これが国境を容易に超えることがあり、日本国内法のみならず、海外の法制についてのリスクを十分に把握してビジネスの設計から、システムアーキテクチャの設計まで考えなければならない。

いうまでもなく、IoTのシステムインフラが拡大していくと日本の製造業においても製造物がネットワークにつながっていく、そしてこれが世界に販売されていく、医療機器、自動車、パソコン、家電、建築物、交通インフラなどすべてがネットワークにつながろうとしている。にもかかわらず、日本の経営者からはやりものとしてのIoTのことばは発生られても、これらがハッキングされたときのリスクへの創造性があまり高くない。これまでそれほどネットワークやセキュリティのエンジニアが必要でなかった企業においてもそのような人材が必須となる時代がそこまで来ているのです。

すでに、リスクが顕在化して事例として、とある家庭用の見守りWebカメラではデフォルトの設定に種類がなく、高度なハッキング技術がなくても、同じ商品を購入すれば、ハッキングされかねない形で商品が販売されている例もすでにありました。これは高度な技術というよりも、リスクを設計の観点から分析し、初期設定において、購入する顧客のITリテラシーが高くない場合のリスクマネジメントの意識が低すぎる事例でした。

このようなレベルでとどまればよいですが、ベルギーでのテロにおいて、原発が対象とされたように、リアルに攻撃されるだけではなく経済インフラを使って相手の国に打撃を与えることも可能な時代になってきています。これに対し、原発などを管理する電力会社などインフラ企業においてもセキュリティの意識とその人材が経営陣にどれだけいるかを真剣に考えなければなりません。

今こそ、コーポレートガバナンスを考えるうえで経営や財務だけではなく、ITやセキュリティが理解できる。そして戦略的に活用できる人材が必要であることを指針として取り込むべきである。日本の経営を全産業ソフトウェア化の時代において負けないようにするのみならず、適切なリスクマネジメントできる企業とする必要があると考えます。私は、取締役会機能評価の現場においては、このような視点から取締役会の意見がでているかを私は重要な要素として議論し、アドバイスし、このような仕組みと強調できる仲間を集めていきたいと考えております。


posted by NAY at 16:38| コーポレートガバナンス

2016年01月31日

コーポレートガバナンス強化と社外役員の資質の再考察2:経済的自立性と報酬の問題

コーポレートガバナンスの強化において独立役員の選任の基準はどのように考えるべきであろうか。会社との取引関係や経歴などこれまでの独立性の基準はもちろん独立性の判断基準足りえると思われ、通常は、

@株主との関係、A取引先企業との関係B会社との経済的利害関係Cこれまで一定の関係にない専門的サービス提供者D近親者かどうかなどを検討の独立役員の選任の基準としている企業は多いものと思われる。

しかしながら、このような基準だけでは不十分な場合である。やはり、社外役員が対象会社以外の収入では自活できないような場合である。不祥事が起こった場合、その職責を賭してでもNOといえるかは、対象会社からの経済的な独立性と、自らの経済的自立性の視点も検討要素とすべきではないかと考える。社外役員といえでも人間であり、年齢によっては家族を養っている方が少なくない。
社外役員としての報酬が生活の基盤を支える所得の中心となってしまっては、本当の意味で、その立場を賭して業務執行取締役や取締役会に反対意見屋反対票を投じることができるのか限界があると思われる。やはり社外役員の選任基準においては、候補者の経済的自立性についての考慮要素も加味することも考えることも必要ではないかと考える。

一方で、この議論を進めすぎると会社からの経済的な依存度を下げればよいということになるがそうではない、社外役員自身が他の仕事で経済的な自立性が確保できていても、会社からの役員報酬が少なすぎる場合も社外役員がコーポレートガバナンスに本当に機能しているのか疑問の余地がある。会社の規模、海外事業所の有無、事業所の数や関連会社の数ビジネスの種類等に応じ適切な報酬が支払われているかの最低限の基準についても併せて議論しておく必要があるものと思われる。


posted by NAY at 19:26| コーポレートガバナンス

2015年12月28日

証券取引監視委員会の東芝の旧経営陣への刑事告訴のニュースに隠れたヘルスケア事業の売却問題

証券取引等監視委員会が東芝の旧経営陣3社長に刑事告発の検討に入ったとする報道がなされてきている。日本を代表する企業がここまで巨額の不正会計を行っていた以上、辞任や課徴金だけの処分では、責任を取ったことにはならないのは言うまでもなく、刑事責任の検討は必要不可欠であると考える。この点については、他の記事においても言及がなされているであろうから別の視点から本事件を見ておきたい。

今回は、不正会計で利益の水増しを行っていたのみならず、今回の事態が明るみに出たことで益々東芝への不信は増大し、業績を改善するために、重要なヘルスケア事業の売却を検討している点についてとりあげたい。

売却の対象と取りざたされている東芝メディカルシステムズこの事業においては、DNA検査装置、医療画像のシステムや電子カルテのインフラを国内の病院等に提供する事業がある。これは何を意味するか。もし買収先が外国企業でかつ個人の情報やプライバシーの保護にあまり関心のない企業であったとすれば、我々のヘルスケア関連のデータがどのように扱われるかその安全の保障が揺らぐ可能性はないのか。

この問題は、かつてパナソニックヘルスケアの売却検討時に問題となったことと同様の問題である(当時のロイターの報道記事)。パナソニックヘルスケアは当時単純に業績ベースで評価した価格をはるかに凌駕する高い評価額が付けられた。患者のデータの再利用に非常に価値があると評価された可能性は否定できない。ヘルスケア事業の売却は、単に私企業の事業部門の売却とだけとらえてよい問題ではないのである。

今回も東芝メディカルシステムズは、カルテや画像診断のシステムを販売しているだけで、患者のデータを蓄積していなかったとしても、保守サービス等も提供しており、この点が本当に第三国の株主が過半数を占めた場合に、適切な情報管理と運用が行われるのかは不明である。万が一このような懸念がある外国企業に売却されても、現行法では個人情報やプライバシーの観点化からこの売却を予防的にに差し止める法的手段を考えるのは難しい。

このようにヘルスケア産業を巻き込んだ不祥事は、医療サービスを利用する一般個人にも影響しうる問題であることにもっと関心を持ってもらいたい。残念ながらこの観点からの報道が全くない。今回は情報の蓄積がないから大丈夫であるとか、保守においては情報に触ることが絶対にないと言い切れる取材がなされたのであれば私も何も言うつもりはありませんが、おそらくそこまで深堀はされていないのではないでしょうか。

皆さんも報道から分かる事情だけではなく何が今の日本で起ころうとしているのかもっと関心をもってもらいたい。この問題は法改正で対応すればよいではないかという議論もあるが、パナソニックヘルスケアの問題が起こった後に行われたはずの今回の個人情報保護法の改正においても直接的にこのような売却を止める法改正は採用とはなっていない。情報法制で個人の利益を守り切ることは難しく、東芝の事件を通じ、コーポレートガバナンスを有効に機能させ、不祥事を未然に防止することがいかに重要か改めて考えさせられる次第である。

posted by NAY at 22:52| コーポレートガバナンス

2015年12月21日

コーポレートガバナンスが機能せず企業不祥事が起こった場合の技術流出と経営者責任の重み

東芝の不祥事に関し、新日本有限責任監査法人への行政処分と課徴金のニュースが飛び込んできている。記事によれば、今後旧経営陣を含む上層部への責任追及の検討がなされるようである。企業が課徴金を課されたり、水増しや粉飾があった場合、企業としての業績を回復させるために企業再編の動きに繋がることが多い。

しかし、企業再編によって、今後の日本で何が起こるのかをもう少し真剣に考えてもらいたい。中国では、今に始まったことではないが、不動産などの買収のみならず、知的財産を含む技術を狙った買収が増えてきている。これは、今までのM&Aにも現れている現象であるし、以下の日経の記事にも現れている。

知的財産も爆買い 半導体の「飢えた虎」 (中国と世界) 日本経済新聞の記事


中国もこれまで、不動産等の資産の膨張によるバブルによる成長に限界が生じ、企業も下請け工場から、独自の技術による成長を考えなければならないフェーズにきており、東芝の企業再編やシャープの業績不振などは、格好のターゲットになる。

東芝は、このような中国の政策的な動きの格好のターゲットになる。そして、一度買収され海外に流出した技術は、少子高齢化、人口減少に対する対策を何も打てない日本には絶対に戻ってこない。なぜならば、市場としての魅力が全くないのみならず、さらに自国の産業強化にその目的があるからである。これは、企業不祥事が雇用を消滅させ、日本経済にダメージを与えかねない状況にあるということを意味している。

東芝の不祥事に関し、この結果、リストラが検討されているが、人間の頭にある技術流出もある。このような日本経済を支えるノウハウの流出が不祥事に伴って発生するという現実も起こる。取締役の責任はそれだけ思いと考えなければならない。

弁護士の我々も、国の政策としてももっと議論し、コーポレートガバナンスや社内の機関設計・内部統制を議論しなければならないのではないかと強い危機感を感じる。ただ単に士業として稼ぐためだけの仕事をしている弁護士ではなく、日本のこのような現状に微力ながら何かできないか真剣に考えなければならないと日々考える。まずは、企業内のコーポレートガバナンスや内部統制の機能をしっかりと構築しつつ、取締役会の機能評価、役員へのより広い視点での啓蒙を続けていきたいと思う。


posted by NAY at 08:28| コーポレートガバナンス

2015年11月29日

コーポレートガバナンス強化と社外役員の資質の再考察1

コーポレートガバナンスコードでも社外役員の数の確保が要請されています。ただ単に員数をそろえたから十分なコーポレートガバナンスが実現できるかというと現実はそうではないと考えています。それでは、有効にコーポレートガバナンスが機能するため社外役員の資質とはどのようなものでしょうか。もちろん法律、財務、会計や業界を熟知していること等様々なプロフェッショナルとしての資質は有効としても、そういった理論的かつテクニカルな分野の知識だけで経営判断ができないのは言うまでもありません。もっと広い観点で企業の社会的責任、顧客をはじめとするステークホルダーへの信頼を裏切らないという観点が極めて重要だと考えます。

この点、社外役員の不足を好機ととらえ会計士や弁護士会は社外役員の推薦名簿は作成されていますが、単に新たな職域拡大として意識しているのならこれは大きな間違いです。前述の通り、法令や財務、会計当の知識だけにとらわれた判断ではまずいのです。もっと、大きな枠組みで企業の社会的正義としてのコンプライアンスという概念をとらえなければなりません。このことは過去の不祥事事件の背景をみていくと、明らかになって参ります。この観点から、士業は社外役員候補者を選定するのであればぜひ進めていただきたいと思います。

例えば、パロマの事件では、現場での外注先や修理業者の不正改造事件では、不正改造が行われた一定期間の回収は行われたものの、それ以前の不正改造の給湯器が市場に残されてしまって、それが放置されました。結果として事件・事故が発生し、大きな不祥事に発展しました。なお、この事件では、訴訟で修理業者に問題があるとしてパロマは裁判所で責任を問われない判断がなされた事例があり、これをもって大丈夫だという判断がなされていた可能性があります。

しかし、裁判所の判断も万能ではありません。裁判所は、弁論主義に基づき、基本的には当事者の主張立証した事実関係から判断されますので、個別の事件での判断が出たとしても、企業の一連の不祥事案件の全体像を判断したことにはならず、理論的レベルで勝訴したのではなく、単に主張立証責任のレベルで被害者側が十分に主張立証できずに勝訴したということは考えられるのです。

したがって、不祥事に関連した個別事例において裁判所において勝訴できたとしても、これによって、一連の事象に問題がないということにはなりません。法律や訴訟というレベルではなく、本当に企業内の情報を精査した時に、企業の顧客を含むステークホルダーに対する責任を裏切っていないのかどうかというより広い観点での考察が必要です。

特にこのケースでは、不正改造がなされた可能性がある一部の商品群を放置したことに問題があり、放置することにより、2次被害が発生しています。商品に問題があり2次被害の可能性のある業態では特に注意が必要です。このことは、特に2次被害が発生しやすい食品衛生の問題やBtoCの商品を製造販売している企業においては注意が必要です。また、これからの季節は特に飲食関係はノロウィルス等に対する対策も強化することが望まれます。

また、ささやき会見で有名となった船場吉兆の事件においても、根本的にお客様の信頼を取り戻そうとする姿勢があったでしょうか。経営陣は、場当たり的な対応に終始し、徹底的な改善策を施すどころか民事再生手続の申立てをした後ですら、新たな不祥事が発覚し、結果破産に追い込まれました。これも、顧客の信頼を裏切らない姿勢と実行力があれば、このような事態は避けられたと思います。また、食品の不祥事としてリーディングケースとなった雪印乳業の事件も、2次被害を防部ために、消費者の早期のクレーム発生時に対応すべき事例でした。

以上からすれば、法令、財務、会計といったテクニカルな観点よりも広い、企業の社会的責任の観点から、不祥事とトラブル対応と予防を行うことが極めて重要だと思われます。そのために、普段からお客様の信頼を裏切らないために、事業上の大きなリスクファクターを洗い出し、集中的に対応することが重要であると考えます。社外役員にも、広い観点からリスクを分析し、取締役にこれを進言できる資質が必要であると考えます。

posted by NAY at 19:30| コーポレートガバナンス

2015年11月12日

コーポレートガバナンスコード対応状況・監査委員等設置会社等雑感

上場企業において、コーポレートガバナンスコードへの対応が進んでいる。しかしながら、現場の声を聴く限りはまだ手探り状態で、他社の事例を参考に自社の実態に合わせるのが実情ではないだろうか。既に開示されている企業に加え、対応状況が徐々に明らかになる。
本年7月14日時点の集計によると、新会社法の施行により、監査等委員会設置会社の選択が可能となり、コーポレートガバナンスコードの独立役員の員数を確保することなどを理由としておよそ158社、東証全上場会社の4.5%がこの新しい機関設計へ移行を行った(金融庁 スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第2回)議事次第)。個人的には社外取締役の員数をそろえるための監査等委員会設置会社が本当に有効なのかはまだまだ議論と評価が必要であるように思う。今後、各企業の開示事例の資料集を策定し、今後の対応や改善を試みる企業の参考となる情報を提供していきたい。

現時点においては、明確に監査等委員会設置会社に移行したことによって大きな変化がおきたという現場での意見はまだ少ないため、無理に移行するのではなく、コーポレートガバナンスコード対応においては、Explainを行い、適任な社外役員の確保をじっくり時間をかけて行うことも選択肢にいれるべきと個人的には考えている。

ただ、東証一部上場企業でも上位層であれば、有能な人材を確保できるが、市場変更したばかり企業やマザーズ市場に上場している企業においては人材の確保が難しいのが実情だ。この問題に対応すべく、社外役員候補のすそ野を広げる育成が急務と考え、本ブログをはじめ情報発信を行うことが必要であると考えるほか、社外役員への報酬の低さなども影響しているものと思われ、社外役員が適切に稼働できる報酬額についても統計的な分析を検討するべきであると考えている。

これを機に本ブログのタイトルも変更し、上場企業の役員としての経験や公認不正検査士としての内部統制、不正対策の知見から適切なコーポレートガバナンスや適切な取締役会の運営方法などについても考えていきたい。
posted by NAY at 01:07| コーポレートガバナンス

2011年11月27日

オリンパス事件と政府の社外取締役の義務化方針

政府は、オリンパス事件や大王製紙の事件を受けて、大会社への社外取締役の義務付けを行うという。しかし、これだけで不正防止になるわけではない。なぜならばオリンパス事件では、大手証券OBの社外取締役の関与が疑われていること、そして、あのエンロン事件では、社外取締役がいても、事件を止めることはできなかったのは周知の事実であるからである。これを機会に政府は欧米に、社外取締役を制度化せよとでも言われたのであろうか。もう少し政府には、社外取締役の弱点、効能及び限界について慎重に議論してもらいたい。

個人的には、効果的な不正防止へ向けたガバナンスを検討するには、やはり法律による一律の制度設計では困難であると考える。外部の意見をとりいれる制度を構築しても、どのような人間が関与するかで制度自体の目的が骨抜きになることは、否定できない。一方で過半数を社外取締役にするような議論もあるが、これはこれでかえって経営のスピードを停滞させることにならないか、慎重な議論をすべきである。

現時点では、まだ、最近話題の事件での第三者委員会の意見も、刑事事件の捜査の進展もこれからである。原因を断定することはできない。これらの不祥事について真相が明らかになり次第、これを踏まえた上での議論をしてもらいたい。規制をするのは簡単だが、不正防止に対し、効果的な制度設計を検討すべきである。一方で、日本の活力を失わないために、経営のスピードを止めないようなバランスも図るべきだ。

今回の問題は、以下のような視点も含めて議論しなければならないし、問題は以下の視点に限られるものでもない。

@社外取締役を義務化するだけの議論ではなく、社外の役員人材をどのように確保するのか、育成するのか。
A仮に社外取締役を選任するにしても大手企業OBばかりが社外取締役・社外監査役になるような制度でよいのか。
B根底に、上司に従っていればよいとか事なかれ主義の風土に日本の教育が影響していないのかも考えるべきである。
Cさらに、良い人材を確保できてもエンロン事件の社外取締役の議会での証言では、情報が適切に与えられなかったとの指摘もあり、このような場合にどう対処するか。
Dまた月1回開かれる取締役会で、社外取締役にどれだけの情報入手能力があるか。おそらく正規の取締役会以外で、議論される不正への問題というものが存在するのも否定ではできない。

これらの問題を見ても、社外取締役だけを声高に叫んでも、それだけで不正防止への特効薬になるわけではないのである。政府与党は、どうも報道や外圧などに影響されて、制度の改正を議論しているように思えてならず、個別の問題について独自の解決能力があるとは到底思えない。円高、震災後の復興、TPP問題もあり、混迷を極めるこの時代において、理念も政策提案能力もない民主党にこれ以上政権を任せていたよいのか極めて疑問である。

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posted by NAY at 21:56| コーポレートガバナンス