2011年11月16日

相続税増税の見送りにより顕在化しなかった相続トラブル増加と事業承継への障壁

政府税調は15日、未成立の11年度税制改正法案に盛り込まれていた相続税増税などについて、12年度税制改正に引き継ぎ実施することを見送る検討に入った。野党の反発が強いため。消費税増税論議を優先し、増税項目を絞り込む必要があると判断した。これには私も安心しました。

というのは、最近の相続紛争において、現預金が豊富にある事例は少なく、必ずと言ってよいほど流動性の少ない固定資産や株式などの処分を求められる事例が多く、遺産分割協議において円滑に財産の分配が進まずこの評価を巡って血みどろの紛争に発展する事例は少なくなかったからです。このような状況下で、相続税の基礎控除部分が引き下げられると、こういった紛争事例はより増えて、これまでトラブルにならなかった事例が、納税をきっかけとして紛争化する事例の激増を大変危惧していたのです。
さらに、この税制は、中堅企業や中小企業の事業承継においても大きな影響を懸念していました。特に、相続税の基礎控除の引き下げは、流動資産を保有していないオーナー企業にとっては、大きなトラブルとなり、オーナー親族の紛争に発展し、最悪の場合、倒産にに至る例もこれまでも存在していましたから、さらに増えるのではないか大変心配していました。特に地方などの雇用を支える中堅企業や中小企業の数がより少なくなり、地方の疲弊はより進むことになりかねなかったのではないでしょうか。

今の政権与党は、お金のあるところから取ればよいと言うが、政策の実行過程で、その負の部分に耳を傾けずに単に政治的な人気取りに走り対応を誤れば、ただでさえ再就職の厳しい地方において、多くの人を路頭に迷わせることになる。今回は、野党の反対でこのようなことは防止されたが、税制改正の場面では負の要素をきちんと検証してもらいたいと考えています。

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posted by NAY at 11:02| 相続・事業承継