2015年12月28日

証券取引監視委員会の東芝の旧経営陣への刑事告訴のニュースに隠れたヘルスケア事業の売却問題

証券取引等監視委員会が東芝の旧経営陣3社長に刑事告発の検討に入ったとする報道がなされてきている。日本を代表する企業がここまで巨額の不正会計を行っていた以上、辞任や課徴金だけの処分では、責任を取ったことにはならないのは言うまでもなく、刑事責任の検討は必要不可欠であると考える。この点については、他の記事においても言及がなされているであろうから別の視点から本事件を見ておきたい。

今回は、不正会計で利益の水増しを行っていたのみならず、今回の事態が明るみに出たことで益々東芝への不信は増大し、業績を改善するために、重要なヘルスケア事業の売却を検討している点についてとりあげたい。

売却の対象と取りざたされている東芝メディカルシステムズこの事業においては、DNA検査装置、医療画像のシステムや電子カルテのインフラを国内の病院等に提供する事業がある。これは何を意味するか。もし買収先が外国企業でかつ個人の情報やプライバシーの保護にあまり関心のない企業であったとすれば、我々のヘルスケア関連のデータがどのように扱われるかその安全の保障が揺らぐ可能性はないのか。

この問題は、かつてパナソニックヘルスケアの売却検討時に問題となったことと同様の問題である(当時のロイターの報道記事)。パナソニックヘルスケアは当時単純に業績ベースで評価した価格をはるかに凌駕する高い評価額が付けられた。患者のデータの再利用に非常に価値があると評価された可能性は否定できない。ヘルスケア事業の売却は、単に私企業の事業部門の売却とだけとらえてよい問題ではないのである。

今回も東芝メディカルシステムズは、カルテや画像診断のシステムを販売しているだけで、患者のデータを蓄積していなかったとしても、保守サービス等も提供しており、この点が本当に第三国の株主が過半数を占めた場合に、適切な情報管理と運用が行われるのかは不明である。万が一このような懸念がある外国企業に売却されても、現行法では個人情報やプライバシーの観点化からこの売却を予防的にに差し止める法的手段を考えるのは難しい。

このようにヘルスケア産業を巻き込んだ不祥事は、医療サービスを利用する一般個人にも影響しうる問題であることにもっと関心を持ってもらいたい。残念ながらこの観点からの報道が全くない。今回は情報の蓄積がないから大丈夫であるとか、保守においては情報に触ることが絶対にないと言い切れる取材がなされたのであれば私も何も言うつもりはありませんが、おそらくそこまで深堀はされていないのではないでしょうか。

皆さんも報道から分かる事情だけではなく何が今の日本で起ころうとしているのかもっと関心をもってもらいたい。この問題は法改正で対応すればよいではないかという議論もあるが、パナソニックヘルスケアの問題が起こった後に行われたはずの今回の個人情報保護法の改正においても直接的にこのような売却を止める法改正は採用とはなっていない。情報法制で個人の利益を守り切ることは難しく、東芝の事件を通じ、コーポレートガバナンスを有効に機能させ、不祥事を未然に防止することがいかに重要か改めて考えさせられる次第である。

posted by NAY at 22:52| コーポレートガバナンス

2015年12月21日

コーポレートガバナンスが機能せず企業不祥事が起こった場合の技術流出と経営者責任の重み

東芝の不祥事に関し、新日本有限責任監査法人への行政処分と課徴金のニュースが飛び込んできている。記事によれば、今後旧経営陣を含む上層部への責任追及の検討がなされるようである。企業が課徴金を課されたり、水増しや粉飾があった場合、企業としての業績を回復させるために企業再編の動きに繋がることが多い。

しかし、企業再編によって、今後の日本で何が起こるのかをもう少し真剣に考えてもらいたい。中国では、今に始まったことではないが、不動産などの買収のみならず、知的財産を含む技術を狙った買収が増えてきている。これは、今までのM&Aにも現れている現象であるし、以下の日経の記事にも現れている。

知的財産も爆買い 半導体の「飢えた虎」 (中国と世界) 日本経済新聞の記事


中国もこれまで、不動産等の資産の膨張によるバブルによる成長に限界が生じ、企業も下請け工場から、独自の技術による成長を考えなければならないフェーズにきており、東芝の企業再編やシャープの業績不振などは、格好のターゲットになる。

東芝は、このような中国の政策的な動きの格好のターゲットになる。そして、一度買収され海外に流出した技術は、少子高齢化、人口減少に対する対策を何も打てない日本には絶対に戻ってこない。なぜならば、市場としての魅力が全くないのみならず、さらに自国の産業強化にその目的があるからである。これは、企業不祥事が雇用を消滅させ、日本経済にダメージを与えかねない状況にあるということを意味している。

東芝の不祥事に関し、この結果、リストラが検討されているが、人間の頭にある技術流出もある。このような日本経済を支えるノウハウの流出が不祥事に伴って発生するという現実も起こる。取締役の責任はそれだけ思いと考えなければならない。

弁護士の我々も、国の政策としてももっと議論し、コーポレートガバナンスや社内の機関設計・内部統制を議論しなければならないのではないかと強い危機感を感じる。ただ単に士業として稼ぐためだけの仕事をしている弁護士ではなく、日本のこのような現状に微力ながら何かできないか真剣に考えなければならないと日々考える。まずは、企業内のコーポレートガバナンスや内部統制の機能をしっかりと構築しつつ、取締役会の機能評価、役員へのより広い視点での啓蒙を続けていきたいと思う。


posted by NAY at 08:28| コーポレートガバナンス

2015年12月07日

Airbnb、民泊解禁と公衆衛生(風営法関連事業の問題)

大田区の特区を活用した民泊条例案が可決されたニュースが入ってきている。テロ対策、パンデミック対策については十分かは以前のブログでも指摘させていただいた。しかし、ホストと利用者以外の周辺住民というステークホルダーへの配慮の観点からもう一つ心配している事項があります。

それは、風営法における無店舗型性風俗特殊営業の存在である。現場の保健所等の行政もこの問題を心配している者もいる。特にビジネスホテルにおいても反社会的勢力の温床になりやすいこの手のビジネスにおいて、排除する体制を検討しているがなかなか完全排除できないのが実情です。この点、民泊と同じく旅館業法のグレーゾーンであるウィークリーマンションの適法性について検討を行ってみると、この業態を認めるかどうかの問題点の1つとして性風俗産業の暗躍の問題とこれを排除して公衆衛生を考えなければいけない点をを挙げることができます。

無店舗型性風俗特殊営業と民泊は残念ながらビジネス的に親和性は高いものと思われ、特にマンション等では、こういったが利用形態でマンションの平穏が害されることは間違いありません。区分所有権者といえどもこういった利用形態は近隣住民の許容の限度を超えているものと考えられます。特に非居住者の外国人が所有する物件ではこのような問題は多く発生しそうな気がしております。

したがって、民泊解禁においては、ホストの届出制または登録制により、マンションの管理規約を提出させ、民泊が許容されることを条件とすべきで、一定の回数上限も検討してもよいかもしれません。また一方で、ルールを作っても違反行為も発生する可能性があることから、可能であれば風営法の側でも一定の改正を行い、民泊施設の活用で、無店舗型性風俗特殊営業の運用を行う場合を処罰又は取締まれるように対応すべきではないかと思われます。

実際、渋谷区では、ホテル以外の施設でこのような利用がなされないように旅館業法の上乗せ条例もある他、新宿区や池袋など繁華街の近いエリアでは旅館業類似の業態に対する旅館業法の運用は厳しく行われています。地域的にこのような公衆衛生の観点から旅館業法が機能している側面もあるのです。

民泊を解禁しつつ、適正に育成するためには、周辺の法律の運用強化により、対応すべき問題もあるものと考えます。誰しも自分の隣の家で無店舗型性風俗特殊営業の利用をされたい人など誰もいないのではないかと思います。特に、小さい子供たちがいるような環境ではなおさらのことです。少子高齢化対策が急務の日本では住環境の悪化はさけたいところです。

屋や上記の問題とは異なるものの住環境の悪化という点では共通する問題が外国では発生制定ます。現に米国サンフランシスコ市では、Airbnbの解禁でこちらの方が収入が得られるようになり、居住用の賃貸借契約の賃料が上昇し、住環境の確保が難しくなっているエリアが出てて来てる弊害もでてきています。解禁した場合のメリットのみならずデメリットに対策を効率的に対応することで、住環境の悪化を防ぎつつ、外国人旅行者を安心して迎え入れることができるインフラとする議論が必要だと思われます。



posted by NAY at 22:18| 電子商取引/IT/コンテンツ