2015年11月29日

コーポレートガバナンス強化と社外役員の資質の再考察1

コーポレートガバナンスコードでも社外役員の数の確保が要請されています。ただ単に員数をそろえたから十分なコーポレートガバナンスが実現できるかというと現実はそうではないと考えています。それでは、有効にコーポレートガバナンスが機能するため社外役員の資質とはどのようなものでしょうか。もちろん法律、財務、会計や業界を熟知していること等様々なプロフェッショナルとしての資質は有効としても、そういった理論的かつテクニカルな分野の知識だけで経営判断ができないのは言うまでもありません。もっと広い観点で企業の社会的責任、顧客をはじめとするステークホルダーへの信頼を裏切らないという観点が極めて重要だと考えます。

この点、社外役員の不足を好機ととらえ会計士や弁護士会は社外役員の推薦名簿は作成されていますが、単に新たな職域拡大として意識しているのならこれは大きな間違いです。前述の通り、法令や財務、会計当の知識だけにとらわれた判断ではまずいのです。もっと、大きな枠組みで企業の社会的正義としてのコンプライアンスという概念をとらえなければなりません。このことは過去の不祥事事件の背景をみていくと、明らかになって参ります。この観点から、士業は社外役員候補者を選定するのであればぜひ進めていただきたいと思います。

例えば、パロマの事件では、現場での外注先や修理業者の不正改造事件では、不正改造が行われた一定期間の回収は行われたものの、それ以前の不正改造の給湯器が市場に残されてしまって、それが放置されました。結果として事件・事故が発生し、大きな不祥事に発展しました。なお、この事件では、訴訟で修理業者に問題があるとしてパロマは裁判所で責任を問われない判断がなされた事例があり、これをもって大丈夫だという判断がなされていた可能性があります。

しかし、裁判所の判断も万能ではありません。裁判所は、弁論主義に基づき、基本的には当事者の主張立証した事実関係から判断されますので、個別の事件での判断が出たとしても、企業の一連の不祥事案件の全体像を判断したことにはならず、理論的レベルで勝訴したのではなく、単に主張立証責任のレベルで被害者側が十分に主張立証できずに勝訴したということは考えられるのです。

したがって、不祥事に関連した個別事例において裁判所において勝訴できたとしても、これによって、一連の事象に問題がないということにはなりません。法律や訴訟というレベルではなく、本当に企業内の情報を精査した時に、企業の顧客を含むステークホルダーに対する責任を裏切っていないのかどうかというより広い観点での考察が必要です。

特にこのケースでは、不正改造がなされた可能性がある一部の商品群を放置したことに問題があり、放置することにより、2次被害が発生しています。商品に問題があり2次被害の可能性のある業態では特に注意が必要です。このことは、特に2次被害が発生しやすい食品衛生の問題やBtoCの商品を製造販売している企業においては注意が必要です。また、これからの季節は特に飲食関係はノロウィルス等に対する対策も強化することが望まれます。

また、ささやき会見で有名となった船場吉兆の事件においても、根本的にお客様の信頼を取り戻そうとする姿勢があったでしょうか。経営陣は、場当たり的な対応に終始し、徹底的な改善策を施すどころか民事再生手続の申立てをした後ですら、新たな不祥事が発覚し、結果破産に追い込まれました。これも、顧客の信頼を裏切らない姿勢と実行力があれば、このような事態は避けられたと思います。また、食品の不祥事としてリーディングケースとなった雪印乳業の事件も、2次被害を防部ために、消費者の早期のクレーム発生時に対応すべき事例でした。

以上からすれば、法令、財務、会計といったテクニカルな観点よりも広い、企業の社会的責任の観点から、不祥事とトラブル対応と予防を行うことが極めて重要だと思われます。そのために、普段からお客様の信頼を裏切らないために、事業上の大きなリスクファクターを洗い出し、集中的に対応することが重要であると考えます。社外役員にも、広い観点からリスクを分析し、取締役にこれを進言できる資質が必要であると考えます。

posted by NAY at 19:30| コーポレートガバナンス

2015年11月15日

Airbnb解禁とテロ・パンデミック対策との整合性

あまりイノベーションを阻害したくないので広くコメントすることは避けてきましたが、今回のフランスでのテロもありましたし、エボラ出血熱や韓国での中東由来のウィルスMERSの拡大も続きましたのでやはり黙っているべきではないと考えました。

規制改革推進の中で、Airbnbの解禁が話題になっている。私も一部省庁には意見を述べさせていただきましたが、シェアリングエコノミーでもともと業法規制の背景にある、公衆衛生のコントロール、治安の維持は決して緩和してはならないと考えています。

日本は安保法制を通し、政治的には集団的自衛権行使容認に舵を切った以上、テロの標的になる可能性は否定できません。また、経済のグローバル化で、いずれエボラ出血熱の様な危険な感染症の水際での排除がいずれ限界を迎える危険はないのでしょうか。日本のナショナルセキュリティを考える上でこのような外国人が国内に入国した場合の対策を併せて議論しなければなりません。国の政策を見ていると、他国に比べてインテリジェンス機能も低いにもかかわらず、このようなナショナルセキュリティの分野が内閣府の規制改革においてもあまり深く議論されていないことについてはリスク感覚がなく非常に危機感を覚えています。

もちろん、私としてもシェアリングエコノミーの活用を否定し入るのではなく、規制緩和により導入するのであれば日本の安全を阻害しない導入方法を考えるべきだと言う意見を持っています。

今回のフランスでの痛ましいISによるテロに対し考えなければないことがやはりあると改めて感じました。日本も標的にならないとは限りません。旅館・ホテル関係においては、宿泊名簿備義務の他に以下のようなテロ対策が行われています。しかしながら、Airbnbのホストにどこまでこのようなことができるのでしょうか。プラットフォーマーであるAirbnbについてもどこまでこの対策ができるのでしょうか。プラットフォーマーとしての責任論をあまり議論せずさらにホストを自由にしてしまってよいのかの点について、この観点から議論しなければなりません。

まずは、旅館・ホテルのテロ対策を見ていきましょう。
以下は国土交通省テロ対策のページより引用したホテル・旅館関係のテロ対策です。

【ホテル・旅館関係】 参考:旅館等における宿泊名者簿等への記載の徹底について
 ・宿泊者名簿への正確な記入
 ・日本国内に住所を有しない外国人宿泊客にあっては国籍、旅券番号も記入
 ・日本国内に住所を有しない外国人宿泊客にあっては旅券の呈示を求め、国籍・旅券番号を確認及び旅券の写しを保存
 ・捜査機関を含む関係行政機関への協力
 ・不審者等発見のための施設内外の巡回・点検
 ・テロ発生時における通報・連絡・指示体制の構築の徹底

【旅行業関係】
 ・旅行者への外務省危険情報の伝達
この辺りが主な対策となっています。
                                                                     
では、旅館業法の規制緩和でAirbnbが認められることで、宿泊名簿備置義務の運用がより徹底されなくなるリスクはあるものと思われます。この点、プラットフォーマーが提供するレーティングの仕組みや評判で問題のあるホストや利用者は排除できるという考えもありますが、テロ攻撃やパンデミック対策においては完全に無力でしょう。初めての旅行者が感染者であったり、テロにおいても現地調査班と実行部隊が異なることは多く事後抑止的な仕組み出は全く機能しないことは言うまでもありません。対象者の滞在中に感染症関連の対策法や警察・公安との連携が迅速にできる仕組みは維持するどころか強化すべきであると思います。

ではどのように規制すべきでしょうか。まずは過剰規制にならないように配慮する必要はあるためこのテロやパンデミック対策分野においての行政への協力を果たすことを認識させたうえでのホストの登録制は導入しておくことが望ましいものと考えます。また一定の違反をしたホストは利用を停止させる処分を行政がもつべきであることから登録後違反した場合の登録取り消しの制度も厳格に運用されるべきだと思います。現状はマンションの管理規約でAirbnbの利用を禁止していてもすり抜けて利用しているケースは既に存在しており、ルールを守らない利用者は存在しています。ルールはすでに守られていないのです。大したことではないではないかとおっしゃるかもしれませんが、その油断がテロやパンデミックを爆発させてしまった後でも同じようなことが言えるかは大いに疑問です。ホストを対象とした登録制をはじめとする最低限の規制は必要であると考えます。

ただ、許可制にくらべ登録制はより制限的ではない規制方法とはいえるものの、限界があります。最近はタワーマンションを中心に外国人の非居住者が投資回収のためにAirbnbを活用していることがあり、非居住者のホスト対策があまり議論されていないことも併せて確認しておきたいと思います。ホストが不動産の現地いないため、テロの場合は、テロ拠点に使いたいときこのような物件を使えばテンポラリーな潜伏を快適に行えてしまいますし、登録制では管理しえない事例もでてきます。

この点をもっと議論しておかないとオリッピックはこれで大丈夫なのでしょうか。この対策としては、やはり、ホストが自分で宿泊者の情報を管理できないなら登録の管理業者の選定を義務化するなど宿泊者の情報を把握する管理者を置くなどの工夫も併せて考えるべきではないかと思います。また、併せて不動産の近くに管理者がいないか住んでいない非居住者がホストの事例においては、併せてプラットフォーマーに一定のルール作りを義務化すべきか、また宿泊者の情報を緊急時に規制当局とどう情報連携するのかの問題が今回の規制緩和では吹っ飛んでしまっています。是非ここをもう少し詰めていただきたいと思います。

適切かつ円滑なシェアリングエコノミーの発展を願いますが、やはり日本の安全がないがしろにされてはいけません。子供たちの世代にも治安の良い平和な日本を守り切ることはビジネスサイドにいても忘れてはならないと思います。

posted by NAY at 10:00| 電子商取引/IT/コンテンツ

2015年11月12日

コーポレートガバナンスコード対応状況・監査委員等設置会社等雑感

上場企業において、コーポレートガバナンスコードへの対応が進んでいる。しかしながら、現場の声を聴く限りはまだ手探り状態で、他社の事例を参考に自社の実態に合わせるのが実情ではないだろうか。既に開示されている企業に加え、対応状況が徐々に明らかになる。
本年7月14日時点の集計によると、新会社法の施行により、監査等委員会設置会社の選択が可能となり、コーポレートガバナンスコードの独立役員の員数を確保することなどを理由としておよそ158社、東証全上場会社の4.5%がこの新しい機関設計へ移行を行った(金融庁 スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第2回)議事次第)。個人的には社外取締役の員数をそろえるための監査等委員会設置会社が本当に有効なのかはまだまだ議論と評価が必要であるように思う。今後、各企業の開示事例の資料集を策定し、今後の対応や改善を試みる企業の参考となる情報を提供していきたい。

現時点においては、明確に監査等委員会設置会社に移行したことによって大きな変化がおきたという現場での意見はまだ少ないため、無理に移行するのではなく、コーポレートガバナンスコード対応においては、Explainを行い、適任な社外役員の確保をじっくり時間をかけて行うことも選択肢にいれるべきと個人的には考えている。

ただ、東証一部上場企業でも上位層であれば、有能な人材を確保できるが、市場変更したばかり企業やマザーズ市場に上場している企業においては人材の確保が難しいのが実情だ。この問題に対応すべく、社外役員候補のすそ野を広げる育成が急務と考え、本ブログをはじめ情報発信を行うことが必要であると考えるほか、社外役員への報酬の低さなども影響しているものと思われ、社外役員が適切に稼働できる報酬額についても統計的な分析を検討するべきであると考えている。

これを機に本ブログのタイトルも変更し、上場企業の役員としての経験や公認不正検査士としての内部統制、不正対策の知見から適切なコーポレートガバナンスや適切な取締役会の運営方法などについても考えていきたい。
posted by NAY at 01:07| コーポレートガバナンス