しかしながら、大学の教授が移籍するとTLOと企業が結んだ契約の効力が及ばなくなり、トラブルになる事例も少なからず存在する。
この問題は、大学と教授、企業の間の利益相反の問題を含んでおり、この点の対応は柔軟な対応が難しいことが多い。事前に大学教授と企業間で直接別途覚書を締結するなどの対応も考えられるが、大学側がこれを禁じている場合もある。
この点については、正直なところ、大学というステークホルダーの存在によりかえって技術の発展を阻害することもある。もう少し柔軟な運用も検討していただきたいところだ。
米国の大学を参考に、産学連携と大学の知的財産の権利の強化をうたい日本でも急速に体制の整備は進んだ。しかし、一方で習ったはずの米国の一部の大学は行き過ぎた知財対応のためにかえって企業側から敬遠されるようになり、産学連携が減少し、他国への共同へ企業がながれてしまった歴史を経験した。そこで、米国では逆に柔軟な対応へ舵を切った大学もある。
もちろん大学にも一部の利益が還元されるべきではあるが、技術の発展のためにステークホルダー同志が連携する制度作りを考えてもらいたい。これらを法務面から支援する我々もよちよち歩きの技術が生み出す利益を多くの人に利用してもらうためにどうすればよいかという視点を持って支援をしなければならない。大変難しい問題である。
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