2011年08月29日

外国法制度リスクとクラウドの問題

中国などのアジアの各国でもデータセンターの集積地を設け、クラウドサービスを展開し、これを日本企業に売り込んでいる。しかしながら、ここにとんでもない落とし穴が潜んでいる。やはり、一部の国では、法制度上、サーバーの情報について、完全な機密性を確保できるとは限らないからだ。従って、特許権利化する前の技術情報等をクラウドにアップするなど言語道断ということになる。それでは、メールやスケジュール、財務情報であればよいであろうか。いやそうではない。当然のことながら、これらの情報により、企業がどの企業とアライアンスするかの戦略が漏れればこれも重大なリスクであるといえる。

おそらくほとんどの上場企業であれば、このようなリスクは当然に認識していると思われる。しかしながら、万が一現地の法制度についての調査を怠り、リスクを認識せず、間違った国のクラウドを活用したことで漏えい事故が発生した場合、役員の株主代表訴訟にも発展しかねない。この場合、このような調査を行わず、情報漏えいを発生させた場合は、リスクに対する事実の認識にも問題があるとして、クラウドを選定した情報担当の取締役の善管注意義務違反が認められる可能性は決して低くないものと思われる。

一方で、私が一番心配しているのは、技術力のあるベンチャー企業、中堅企業や中小企業である。ただでさえ円高で経費削減に奔走している企業にとっては、特にアジア発の格安のクラウドによる経費削減はやさしいお誘いに聞こえるかもしれない。しかし、情報セキュリティ問題について、このような企業の経営者のリテラシーは必ずしも高くない事例が多い。しかも、クラウドのサービス契約締結を行う際に、クラウドサービス提供事業者側の免責条項の確認を行わない経営者が実に多い。

従って、特に情報システム刷新の際に安易に海外のクラウドの活用を検討するのは避けていただきたい。そうでなければ、自社の技術資産を全て抜かれることにもなりかねない。十分に注意してクラウドと付き合ってもらいたい。

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posted by NAY at 12:17| 企業法務全般

2011年08月16日

google+アカウントの突然の削除

google+のアカウントが突然削除されるという事態が話題になっているようです。そこで、google アカウントの利用規約(注1)を見てみると以下のような記載があり、これが根拠ということでしょうか。

4.3 かかる継続的なサービスの革新の一環として、ユーザーは、Google が、事前の通知なく、その単独の裁量により(永久にまたは一時的に)本サービス(または本サービス内の何らかの機能)の提供を中止する場合があることを了承し、これに同意するものとします。ユーザーは、いつでも、本サービスの利用を中止することができます。本サービスの利用を中止する場合、特に Google に連絡する必要はありません。

4.4 ユーザーは、Google がユーザーに対してアカウントへのアクセスを無効にした場合、本サービス、ご自身のアカウントの詳細、またはご自身のアカウントに含まれる如何なるファイルもしくはその他のコンテンツへのアクセスができないことがあることを了承し、これに同意するものとします。

注1:一応規約上は、以下の通り、英文版が適用されるとしているので注意。

3.1 Google が本規約の翻訳を提供している場合、かかる翻訳はユーザーの便宜を図ることのみを目的としたものであり、ユーザーと Google の関係に関しては、本規約の英語版が適用されることに同意するものとします。
3.2 本規約の英語版と翻訳版で相違や矛盾が発生する場合、英語版が優先するものとします。


まず、上記の利用規約の条項について、消費者契約法8条、10条が関連する。この点、消費者契約法の議論上は、googleサービスは無償契約(注2)なので、無効にならないのではないかという方向での見解もあることでしょう。
しかし、googleが展開するサービスには、ユーザーの動向について、情報を獲得する利益や、ユーザーがアカウントを登録し、ざまざまな利用を行うことで、ユーザー数を増やすことで新たな広告ビジネスのインフラを構築できるというメリットがある。一方で、特にgmailやカレンダーのヘビーユーザーも多く一方的に、削除されアクセスできないという不利益を被るため、ユーザー側の登録、利用によって、インフラ提供者側が一定の利益を得ている関係にあるといえ、無償契約とは必ずしも利益状況は同じではないように思える。
まだまだ、利用規約の有効性の議論は十分ではないので、このブログでは不用意に結論を書きませんが、少なくとも契約の無償性のみを根拠に不当条項には該当せず問題ないと直ちに一刀両断的な結論を出すことは断言できないものと思われる。

注2、有償版もあるが、google appsアカウント有償版については、google+は現時点で対応していないようである。

アカウント停止の問題は、googleに限らず、他のサービスでも生じうることで、単にインフラを利用できないと言うだけではなくアカウントと連動している有償のポイントが利用できなくなりユーザーが経済的損失を被る可能性もある問題がある。一方で、システム提供者側は、不正アクセスを防止するためなど一定の必要性からアカウントを止めなければならない事態も発生する。今後は、理屈だけで議論するのではなくこの対立する利益のバランスをどのように図っていくかの議論を尽くしていかねばなるまい。

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posted by NAY at 15:31| 電子商取引/IT/コンテンツ

2011年08月11日

司法修習生の給費制廃止問題

司法修習生への給費制が廃止されるが、その前提となる事実関係の実態調査は、間違っており、このままの制度を続けるのであれば、この業界に優秀な人材は、来ない可能性が高まったといえる。

1 収入調査の実態と現実
 先日、給費制を廃止するのに、法曹の養成に関するフォーラムが公表した5年目の弁護士の収入調査などで、5年目が2000万円超の所得があるなどとの結果が話題に上ったが、この調査自体が、統計の母集団の取り方に問題がある点を全く無視している。この手の調査は日弁連によって行われてきたが、その当時でも一部の派閥に属しているなど付き合いでアンケートに回答する層を除けば、ほとんどが回答していない。ましてや苦労している弁護士はほとんど回答していない。実際、法曹の要請に関するフォーラムが主催したアンケートの回答の回収率は13.4%である。一方で、大手事務所の勤務弁護士でも、賞与部分を入れてもこの数値に届かない方も多くなっているほか、事務所全体の経営状況から、リストラのため退職勧奨をされている例も見受けられる。小職は、事務所を変えようと考える方の相談に乗ってきた経験上強く感じるものがあり、弁護士の収入調査の信憑性に疑問を抱かざるを得ない。

2 法科大学院での学費と貸与制となった場合の返済原資を確保できる保証はない。 
 年々悪化する内定率低下も、給費制を廃止しても返済できるというモデルが虚偽であることが分かる。日弁連の2011年の司法修習生の就職未定率は、43%となっている。ここまで下がると寧ろ本人の能力だけを批判するにはやや躊躇を覚える。既に、大学の新卒の内定率を下回っているのだ。このような状況下で、給費制を廃止した場合、自分ですぐに独立して、この返済を行うことになるが、別のキャリアがある限られた恵まれた環境にある即独立の事例を除けば、学生から司法試験を受けすぐに登録したばかりの弁護士に相談したいと思う依頼者はそれほど多くはない。ましてや、企業のクライアントが付く可能性はほとんどないのが現実である。そんなに甘い世界ではない。

 以上を前提とすれば、給費制の廃止により、返済が確実にできる保証は全くない。
下手をすれば、弁護士登録時に1000万円以上の借金をかかえ、自己破産に陥る事例も出てくるかもしれない。こんな職業をこれから目指そうとする人はどれだけいるだろうか。1000万円をどぶに捨てて、失業者になり、破産もする可能性がある。一方で、成功しないとは言わないが、成功する確率はそれほど高くない。それでも、優秀なあなたはこの業界に来ていただけますか?

 もちろん、財政が悪化する中で、弁護士だけ手厚く保護しろというつもりはない。給費制を廃止するなら、司法試験の受験資格から法科大学院の卒業を外せばいい。予備試験組と法科大学院組とどちらが優秀な人材を輩出できるか自由競争の制度の構築といった前向きな議論はできないのだろうか。

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posted by NAY at 22:00| 日記